キャンプごっこ

子供の頃大好きだったキャンプごっこ。
祖父の家で、マットレスを使ってテントを作り、そこに立てこもる。
姉と私はそれぞれひとつずつ、思い思いのテントをつくった。

私はマットレスをぱたりと三角に折りたたんで細長くし、寝そべるタイプのテントにした。
姉は、屏風のようにテントを仕切りに使い、ロッジタイプにした。

我々の想像力は大したもので、時々、というかしょっちゅうそのキャンプには雨が降ったり、嵐になったりした。
そうなると停電するのである(室内の電気を消すだけ)。
そして、お互いに「停電ですわね、奥様大丈夫?」などと言い合う。
ちなみに、キャンプというワイルドな設定でさえ、我々の会話は近所のおばちゃんたちのそれだ。

そうして懐中電灯を貸しあったり、使い終わった割り箸を山のように台所から拝借してきて、組み木にして姉のロッジで火を焚いたりした。
食料は碁石やカラフルなブロック、透明で色んな色があってきれいだと思っていた100円ライターなんかだった。
想像でも、嵐という非日常は子供たちをそわそわさせた。
それが疑似体験だと分かっていながらも。

そして、「雨があがりましたわね」と言う頃電気をまたつける。
そしてずっと、緩急のまるでないキャンプごっこを続ける。
昼から夕飯時までずっと。

子供の頃は、時間の流れがゆっくりだった。
今のようにぶつぶつと、時間割のように分断されていなかった。

あの頃こうした、なんの変化もないゆるりとした遊びができてよかったと思う。
忙しい今の人生で時々思い出し、ふっと息を抜くことができるから。
ああ自分は本当はあんなにも呑気な人間なのだ、と思って安心できるのだ。

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