可愛いふりして

接客業をしていると、休日にはたくさんの子供連れの親を見かける。
「世の中にはいろんな子供がいるんだなぁ」
と、その時改めて感じるけれど、それは本当に親の教育一つなのだなとも感じる。
たとえば、

「おてつだいカート」という、子供用の小さなカートに商品を乗せて、親と並んで歩きながらたくさんお手伝いしている子供も居る。
親の手伝いをしているけど、ちょっと物を落としただけで叩かられたり蹴飛ばされたりする子供も居る。
家が違えば、こんなにも違うんだなぁと感じさせてくれた。
子供はまだ知らないことが多くて、知ることが出来る唯一の方法が家なのだから、親のやり方をダイレクトに受け止めて行動するんだと思った。
本当に、親の匙加減で子供はぜんぜん違うのだ。
先日来た親子が印象的で、それはまだ小さな男の子と両親との3人だった。
重たい箱を父親の手を借りながら持ったりしていたのだが、すごく楽しそうで始終ニコニコしていて「おてつだい!」らしき言葉を口にしながら私の元へとやってきた。
父親が商品を持ち上げてレジへと置き、ずっと私に笑いかけて何やら拙い日本語を口にする子供がとても愛らしくて、「かわいいねぇ」と言ってあげると、照れたようにもじもじしながら頭を腕で隠して目を逸らした。
母親が「可愛いって、●●ちゃんよかったね」と言うと、「よせやい」といっているのか、また拙い日本語を喋っていた。
今度は照れ隠しなのか、母親と手を繋ぎ、もう片方を父親と繋いで、母親の陰から片方だけの目で私を見上げていた。
父親が会計時、繋いでいた手を放してしまう。
ずっとニコニコしていた男の子の表情は一気に落ち込んで眉も下がってしまった。
「あー!あー!」と言いながら男の子は小さな手を必死で父親に伸ばしていたが、「お父さんお金払うからちょっと待って」と言って財布からお金を出していた。
「おっ、これは泣いちゃうかな?」と感じるくらい、男の子の落胆した表情は先ほどとは天と地で、ずっと悲しげな「あー!」で父親の手を求めた。
本当に、お父さんが大好きなんだろうなぁ。
見かねた父親が何となく財布から50円玉を取り出して男の子に渡すと、その瞬間一気に男の子の顔がぱあっと明るくなった。
手を繋いだままの母親と、「おかね!」「うん、お金だね。50円玉だよ」「ごじゅうえんだま?なに?」とまた可愛らしいやり取りが始まった。
私にも「おかね!」と言ってくる男の子に「現金だなぁ」と洒落たことを感じながら、笑いかけてあげた。
そうこうしている内に会計が終わり、父親が商品を手に持つ。
ようやく手ぶらになった手を男の子の方に向けたが、「おかね!」と小さな手に握られた50円玉を見せつけただけで、母親と一緒に嬉しそうに先に行ってしまったのだ。
今度は父親ががっくりと肩を落として落胆しながらとぼとぼ歩いて行ったのが、なんともまた面白い光景で、仕事中だが一人で笑ってしまった。
離婚して片親になる人が多い世の中だけど、あんな風に両親と手を繋いで満面の笑顔を見せる子供の姿を、離婚しようと考える人たちに見せてあげたいと思った。
(最後はお金の方が大事だったみたいだけど・・・)

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