捨てられた猫を育てることにした

前の猫が死んで、そろそろ半年になろうとするころ、お世話になった動物病院から電話が来た。
学校の裏庭に、捨てられた猫5匹が、前の猫にとっても似ているから見に来ないかというものだった。
この動物病院は、ペットロスを気遣うことで有名な病院だ。

電話をもらった私は、この誘いに迷いを感じていた。
はたから見ても、私自身を第三者的にみても、ペットロスの兆候はない。
もう一度猫との共同生活をするということは、また、悲しい思いをするということだ。

しかし、運よく、あるいは運悪く、電話の時に妹が一緒にいた。
彼女は、大の猫好き、早速行こうとさそってくる。
見るだけならいいかと思い、出かけて行ったら、確かに生まれて間もない子猫が5匹いた。

誰もが思うだろうが、人にせよ、動物にせよ、子供は無条件でかわいい。
しかも、猫は、子猫のときほど、くるくるした目をしている。
だから、猫好きでなくても、子猫の写真を見て、かわいいと思うのだ。

5匹の中のうち、2匹は、前の猫と同じ柄の仔だった。
と、そのうちの1匹が、妹の掌ですうすう寝てしまった。
この偶然ともいえる縁起が、この仔の人生を変えたのである。

それから、11年たった今ではすっかり大人になった猫が私の隣に陣取っている。
既に老猫のいきに達したこの猫は、大きな病気ひとつせず、人間大好き猫になっていた。
人間が嫌いにならなくてよかった。
この猫を見ながら私がいつも思うことだ。

人間以上の家族であった猫ちゃんの存在

昔知り合った方と猫ちゃんとの絆を、当時の私はまるで人間同士の関係のように感じました。

良い職場に恵まれたことがありました。
私は何度か転職した経験を持っているのですが、中には思い出したくもない職場も正直あります。
でも、今でも感謝している幸せな職場もありました。
会社だけでなく、色々なところでリーダー的存在だった我が上司は、楽しいことが大好きな方でした。
厳しくて、私もよく怒られもしたのですが、それは皆正しいこと。
私の至らなさを噛みしめる日々でした
でも、仕事が終わると色々なイベントに私たちを連れていってくれました。
中には、自分が主催者となって行う場合もあり、その時は私は色々なお手伝いをしたものです。
人と人との繋がりを教わったのも、上司だったように思います。
尊敬していましたから、何か手伝ってと言われることがとても嬉しかったことを覚えています。
ある日、またいつものイベントを行うことになりました。
メンバーもいつもと同じの予定でした。
ところが一人、不参加だと言います。
理由を訊くと、可愛がっていた猫ちゃんが天国に旅立ったと言うのです。
更年期の辛い時も、この猫ちゃんがいたから乗り越えられたと言うその方は、見るからに悲しそうで寂しそうでした。
無理にお誘いするのも申し訳ないと思い、不参加のままイベントは行い、いつものような楽しい時間になりました。
その後も、その方は長く落ち込んでる日々が続きました。
廊下ですれ違っても、いつも下を向いて歩いていましたし、疲れたような雰囲気をいつも感じました。
何日かたって、猫ちゃんとの思い出を聞かせて頂きました。
ペットとは思えない、まるで人間の家族の話を聞いているようでした。

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